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2017/09/10 (Sun)

低温ストレスによる細胞障害のメカニズムを解明

細胞情報学教室の服部一輝助教、石川広幸元大学院生、一條秀憲教授らの研究グループは、ASK1–p38というタンパク質のシグナル伝達経路が低温ストレス下で活性化され、フェロトーシスという種類の細胞死を導くことを明らかにしました。本研究成果は、EMBO Reports誌(9月8日オンライン版)に掲載されました。
 
<研究の背景>
 我々の体を構成している細胞は、あらゆる環境要因の変化に曝されながらも、常に一定の状態を保っています。「温度」も重要な細胞外環境の要素ですが、ヒトをはじめとする恒温動物は、環境の温度に関わらず約37度近辺の温度を保っています。しかしながら、細胞外温度の大きな変化は細胞にとって「ストレス」となります。具体的には、タンパク質の構造が変化してしまうことなどにより、そのタンパク質の正常な機能が失われ、細胞が障害を受けることがあります。これまで、低温ストレスが負荷された際の細胞内の変化についての知見はあまりありませんでした。
 
<研究の詳細>
 本研究グループはASK1という分子に注目して研究を始め、ASK1–p38というシグナル伝達経路が低温ストレスによって活性化されることを見出しました。
 続いて、低温ストレスがどのような細胞応答を導くかを調べたところ、長時間の低温ストレスが細胞死を導くことを見出すに至りました。メカニズムの違いによって、細胞死はアポトーシスやネクロプトーシスなどに代表される複数の種類に分類されています。各細胞死は、それぞれ特異的な疾患との関連が示唆されていることから、細胞死の分類には意味があるものと考えられます。今回観察された低温ストレス依存的な細胞死についても、詳細なメカニズム解析を行った結果、フェロトーシスという種類の細胞死を導いていることが明らかとなりました。さらには、この低温ストレス依存的なフェロトーシスに対して、ASK1とp38が必要であることが見出されました。そのため、低温ストレスが負荷された細胞内で、ASK1–p38経路が活性化され、その結果、フェロトーシスが導かれると言えます。
 フェロトーシスは比較的新しい種類の細胞死であり、その分子メカニズムに関しては不明な部分が多く残されていました。そこで、本研究においては、低温ストレス以外のフェロトーシス誘導剤を用いた検討も行っています。その結果、低温ストレス以外のフェロトーシス誘導剤による細胞死に対しても、ASK1およびp38が一部関与していることが見出されました。このことから、ASK1–p38経路が新たなフェロトーシス制御因子として提唱されました。
 
<社会的意義・今後の期待>
 低温ストレスが細胞に長時間負荷される状況は、通常考えにくいかと思います。しかしながら、臓器移植の際の臓器保存という状況においては、長時間の低温ストレスが負荷されます。さらには、この長時間の低温ストレスが臓器障害の原因のひとつであると考えられています。そのため、本研究の成果が臓器保存液の改良に貢献する可能性が考えられます。また、急性腎障害などをはじめとする、各種フェロトーシス関連疾患の新規治療薬創生への貢献も期待されます。
 
雑誌: EMBO Reports
題目: Cold stress-induced ferroptosis involves the ASK1-p38 pathway
著者: Kazuki Hattori, Hiroyuki Ishikawa, Chihiro Sakauchi, Saki Takayanagi, Isao Naguro, Hidenori Ichijo
DOI番号: 10.15252/embr.201744228
アブストラクトURL : http://embor.embopress.org/content/early/2017/09/08/embr.201744228
 


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