新しい論文がNature Communicationsに発表されました。

Decreased CALM expression reduces Aβ42 to total Aβ ratio through clathrin-mediated endocytosis of γ-secretase

Kunihiko Kanatsu, Yuichi Morohashi, Mai Suzuki, Hiromasa Kuroda, Toshio Watanabe, Taisuke Tomita and Takeshi Iwatsubo
Nature Communications 5, Article number: 3386, doi:10.1038/ncomms4386

アルツハイマー病の発症予防因子CALM(カルム)タンパク質が、アミロイドβタンパク質産生酵素γセクレターゼの細胞内局在を制御していることを明らかにしました。この酵素の活性はpHによる影響を大きく受け、特に酸性環境下で凝集性の高いAβ42を多く産生することを見出しました。CALMをコードしているPICALM遺伝子近傍に存在する一塩基多型がアルツハイマー病発症リスクを13%低下させることが知られており、本研究成果から予防アレルを持つ人ではAβ42産生が抑制されて可能性が示唆されました。今後、CALMの機能のみを抑制する方法を明らかにすることにより、アルツハイマー病の予防法の開発につながる他、PICALM遺伝子多型によるリスク評価とテーラーメード医療につながることが期待されます。 本研究は奈良女子大学大学院人間文化研究科 渡邊利雄教授との共同研究の成果です。


東京大学のプレスリリースはこちらです。

本論文に関する日経バイオテク(14.3.1)からの報道はこちらです。

本論文に関する朝日新聞デジタル(14.3.1)からの報道はこちらです。また2014年3月4日付朝日新聞夕刊に掲載されました。

本論文に関するマイナビニュース(14.3.4)からの報道はこちらです。

本論文に関する医療介護CBニュース(14.3.6)からの報道はこちらです。

本論文に関する毎日新聞(14.3.13)からの報道はこちらです。また2014年3月13日付毎日新聞朝刊に掲載されました。



新しい論文がThe Journal of Neuroscienceに発表されました。

CLAC-P/Collagen Type XXV Is Required for the Intramuscular Innervation of Motoneurons during Neuromuscular Development

Tomohiro Tanaka, Tomoko Wakabayashi, Hiroaki Oizumi, Shu Nishio, Takashi Sato, Akihiro Harada, Daisuke Fujii, Yuko Matsuo, Tadafumi Hashimoto, and Takeshi Iwatsubo
The Journal of Neuroscience, 34(4):1370-1379 First Published on Jan 22 2014,doi:10.1523/JNEUROSCI.2440-13.2014

当グループで同定したアルツハイマー病脳の老人斑アミロイドの構成タンパク質であるCLAC-P/collagen XXVについて、今回、胎児の神経筋システムの発生に必須の分子であることを明らかにしました。CLAC-Pを欠損した遺伝子改変マウスの胎児では、脊髄の運動ニューロンが標的骨格筋まで軸索束を投射するものの、筋内での軸索伸長・分枝が起こらず、アポトーシスにより消失すること、またその結果マウスは致死となることを見出しました。運動ニューロンの発生に関わる分子の欠損でこのような広範で顕著な表現型を示す例は稀であり、本研究は神経筋発生の分野に新たな示唆を与えると考えられます。今後、CLAC-Pによる神経−筋肉間相互作用の分子メカニズムの詳細が明らかになることが期待されます。



新しい論文がMolecular Neurodegenerationに発表されました。

Binding of longer Aβ to transmembrane domain 1 of presenilin 1 impacts on Aβ42 generation

Yu Ohki, Naoaki Shimada, Aya Tominaga, Satoko Osawa, Takuya Higo, Satoshi Yokoshima, Tohru Fukuyama, Taisuke Tomita, and Takeshi Iwatsubo
Molecular Neurodegeneration 2014 Jan 13;9(1):7

γセクレターゼの活性中心サブユニットプレセニリンがどのようにしてAβのC末端長を決定しているかについては明らかになっていません。私達は2011年にAβ42産生を変化させるGSM-1がプレセニリンの第一膜貫通領域に結合することを報告しました(Ohki et al., EMBO J 2011)。今回、異なる構造を持ちAβ42産生を上昇させる低分子化合物Fenofibrateも第一膜貫通領域に結合することを見出しました。そしてこの領域と、APP切断中間産物である「長いAβ」の選択的な結合が、Aβ42産生量に影響を与えることを明らかにしました。本研究はγセクレターゼによる膜内配列切断機構の解明につながると同時に、プレセニリンの第一膜貫通領域がアルツハイマー病治療薬候補であるGSMの創薬標的領域となりうることを示しています。本研究は本学大学院薬学系研究科天然物合成化学教室(現、名古屋大学大学院創薬科学研究科)との共同研究の成果です。



有機合成化学教室 金井求教授、相馬洋平グループリーダーとの共同研究成果がAngewandte Chemie International Editionに掲載されました。プレスリリースはこちら、マイナビニュースによる解説はこちらです。


ケンブリッジ大学Peter St. George-Hyslop教授との共同研究成果がStructureに掲載されました。


第32回日本認知症学会において、富田泰輔准教授が「セクレターゼ活性制御によるアルツハイマー病治療薬開発の研究」にて学会賞を、山口一樹君の発表「2型糖尿病とアルツハイマー病を結ぶ分子機構の解明」が学会奨励賞を受賞しました!


新しい論文がBiochemistryに発表されました。

Differential effects of familial Parkinson mutations in LRRK2 revealed by a systematic analysis of autophosphorylation

Shogo Kamikawaji*, Genta Ito*, Tomoko Sano and Takeshi Iwatsubo (*equal contribution)
Biochemistry 52(35):6052-62, doi: 10.1021/bi400596m

Leucine-rich repeat kinase 2(LRRK2)は家族性パーキンソン病(FPD; PARK8)の病因遺伝子産物です。現在までに、R1441C/G/H、Y1699C、G2019S、I2020Tの6種類のアミノ酸置換がPARK8の原因となることが知られていますが、そのメカニズムはよくわかっていません。今回私たちは、2次元薄層クロマトグラフィーによるホスホペプチドマッピングを行い、LRRK2の主要な自己リン酸化部位としてThr1348、Thr1349、Thr1357を同定しました。また、Y1699C変異によりThr1357における自己リン酸化が選択的に抑制されること、低濃度のATP存在下において、解析対象外のY1699C変異体を除くすべての変異体が野生型に比して高い自己リン酸化能を発揮することを発見しました。これらの結果から、細胞内ATP濃度が異常に低下した条件下では、FPD変異型LRRK2は野生型LRRK2より高いキナーゼ活性を発揮する可能性が示唆されました。そのような条件下で過剰リン酸化される基質タンパク質の探索から、FPD変異型LRRK2が神経変性を引き起こす分子メカニズムの解明につながる重要な知見です。



新しい論文がHuman Molecular Geneticsに発表されました。

RNA binding mediates neurotoxicity in the transgenic Drosophila model of TDP-43 proteinopathy

Ryoko Ihara, Koji Matsukawa, Yusei Nagata, Hayato Kunugi, Shoji Tsuji, Takahiro Chihara, Erina Kuranaga, Masayuki Miura, Tomoko Wakabayashi, Tadafumi Hashimoto, Takeshi Iwatsubo
Human Molecular Genetics 22(22):4474-84. First Published Online June 25, 2013 doi:10.1093/hmg/ddt296

TDP-43は家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病因遺伝子であり、家族性及び孤発性ALS患者の運動ニューロンや、前頭側頭葉型変性症(FTLD)患者の大脳皮質において、細胞内封入体として蓄積することが知られています。しかし、これまでどのようにしてTDP-43が神経変性を引き起こすか不明でした。私たちはショウジョウバエの複眼や運動ニューロンにTDP-43を過剰発現させることにより、進行性の神経細胞死を引き起こすモデル動物を作出し、家族性ALSに連鎖するTDP-43の変異や、TDP-43を細胞質に局在させる変異は神経細胞変性を増悪させることを見出しました。さらに、TDP-43はDNA/RNA結合タンパク質であることから、TDP-43のRNA結合能と神経細胞死との関わりを検討したところ、RNA結合能を失ったTDP-43は神経細胞死を引き起こさないことを発見しました。これらの結果は、TDP-43がRNA結合を介して神経細胞死を引き起こすことを示すものであり、神経難病であるALSやFTLDの病因解明、根本治療薬開発に重要な手がかりを与えると期待されます。本研究は本学大学院医学系研究科神経内科学教室、薬学系研究科遺伝学教室との共同研究の成果です。



新しい論文がBiochimica et Biophysica Acta (BBA) - Biomembranesに発表されました。

Protein trafficking and maturation regulate intramembrane proteolysis

Yuichi Morohashi, Taisuke Tomita
BBA Biomembranes 2013 Dec;1828(12):2855-61. doi: 10.1016/j.bbamem.2013.06.001. Epub 2013 Jun 11.

膜内配列切断に関する特集号の中で、切断現象を制御する細胞内小胞輸送の機能的連関について、reviewを執筆させて頂きました。



新しい論文がPLoS ONEに発表されました。

FTY720/Fingolimod, a Sphingosine Analogue, Reduces Amyloid-β Production in Neurons

Nobumasa Takasugi,Tomoki Sasaki,Ihori Ebinuma,Satoko Osawa,Hayato Isshiki,Koji Takeo,Taisuke Tomita,Takeshi Iwatsubo
PLoS ONE 8(5): e64050. doi:10.1371/journal.pone.0064050

スフィンゴシン1リン酸受容体に対する機能性アンタゴニストであるFY720はフィンゴリモドとして多発性硬化症治療薬として使用されている免疫抑制剤です。私たちはこのFTY720が培養神経細胞においてγセクレターゼ活性を抑制し、Aβ産生を抑制することを見出しました。またその分子機構として、既知のスフィンゴシン1リン酸受容体を介したシグナル伝達機構とは異なることも明らかとなりました。一方、ADモデルマウスに6日間投与した場合、脳内Aβ40量が低下するにもかかわらず、脳内Aβ42量は増加するということが明らかになりました。免疫抑制剤としてのFTY720の薬効を考慮すると、これらの結果はFTY720がAβ産生機構のみならず、神経炎症システムを変化させることで脳内Aβ量を制御しうる可能性を示唆しています。今後さらに詳細な解析を行うことで、新しい脳内Aβレベルの制御方法の開発につながることが期待されます。



新しい論文がJournal of Biological Chemistryに発表されました。

Structural biology of presenilins and signal peptide peptidases

Taisuke Tomita, Takeshi Iwatsubo
J Biol Chem 288(21):14673-14680, 2013. doi: 10.1074/jbc.R113.463281

これまでの我々のγセクレターゼに関連する構造活性相関解析の概説を、最近発表されたGxGDプロテアーゼのx線結晶構造解析の解説と合わせてJBCのMinireviewに執筆させて頂きました。



"アルツハイマー病におけるβアミロイド形成機構・抑制薬に関する研究並びに画像・バイオマーカーを用いた治療薬の開発研究"により、岩坪威教授が第10回高峰記念第一三共賞を受賞しました。

高峰記念第一三共賞ホームページはこちらです。


新しい論文がJournal of Medicinal Chemistryに発表されました。

Effect of Helical Conformation and Side-Chain Structure on γ-Secretase Inhibition by β-Peptide Foldamers: Insight into Substrate Recognition.

Yuki Imamura, Naoki Umezawa, Satoko Osawa, Naoaki Shimada, Takuya Higo, Satoshi Yokoshima, Tohru Fukuyama, Takeshi Iwatsubo, Nobuki Kato, Taisuke Tomita, and Tsunehiko Higuchi
J Med Chem. 013 Feb 28;56(4):1443-54. doi: 10.1021/jm301306c. Epub 2013 Feb 6.

セクレターゼの単純な阻害は発生・分化にかかわるNotchシグナルの抑制などによる副作用が予見されており、基質認識機構に基づいたラショナルな活性制御化合物の開発が求められています。我々は以前、 アミノ酸と呼ばれる非天然アミノ酸を用いヘリックス構造を固定した ペプチドフォルダマーが強力なγセクレターゼ阻害剤となることを見出しました(Imamura et al., JACS 2009)。今回、フォルダマーを構成するアミノ酸側鎖を体系的に検討し、阻害濃度と基質選択性に関わるアミノ酸のポジションを決定すると同時に、光親和性標識法などのケミカルバイオロジー的手法を駆使して、既知のスルホンアミド型γセクレターゼ阻害剤とは異なるメカニズムによって基質選択性が生み出されていることを明らかにしました。疎水性である膜内配列を加水分解する新奇活性を示すγセクレターゼの切断メカニズムを考える上でも、重要な知見です。 今後このフォルダマーのデザインを改変していくことで、Aβペプチドの産生のみを特異的に抑制することが可能な、基質特異的γセクレターゼ阻害剤の開発につながることが期待されます。本研究は、名古屋市立大学精密有機反応学分野(樋口恒彦教授、梅澤直樹准教授)、名古屋大学大学院創薬科学研究科天然物化学分野(福山透教授、横島聡准教授)との共同研究成果です。



第17回武田科学振興財団生命科学シンポジウムにおいて、M2の山本薫さんがポスター賞を受賞しました!


新しい論文がBiochemistryに発表されました。

Inhibition of γ-secretase activity by a monoclonal antibody against the extracellular hydrophilic loop of presenilin 1

Takagi-Niidome S, Osawa S, Tomita T, Iwatsubo T.
Biochemistry. 2013 Jan 8;52(1):61-9. doi: 10.1021/bi301252r.

プレセニリン(PS)はアルツハイマー病発症にかかわるアミロイドβタンパク質の産生や、幹細胞の維持にかかわるNotchを切断する酵素γセクレターゼの活性中心サブユニットです。私たちはこれまでにシステイン残基の特異的化学反応性を利用してPSの構造活性相関を明らかにしてきました。今回、構造生物学的情報に基づいたγセクレターゼ活性制御法のラショナルデザインを目指し、PS1のループ領域に対する特異的抗体9D11を作出しました。そして9D11がγセクレターゼ活性に対する機能阻害抗体として働き、アミロイドβ蛋白の産生を抑制する他、γセクレターゼ活性依存性に増殖を示すがん細胞の生存を抑制することを見出しました。9D11は世界で初めて開発に成功したPSに対する阻害抗体であり、特に第一膜貫通領域のダイナミックなモーションがγセクレターゼの基質切断機構に重要という我々の以前の知見を確認できたものです(Takagi et al., J Neurosci 2010)。これらの情報は、構造情報に基づいたγセクレターゼを標的とする治療薬の開発において重要な知見であると考えられます。



新しい論文がNeuronに発表されました。

Activity-Dependent Proteolytic Cleavage of Neuroligin-1

Suzuki K, Hayashi Y, Nakahara S, Kumazaki H, Prox J, Horiuchi K, Zeng M, Tanimura S, Nishiyama Y, Osawa S, Sehara-Fujisawa A, Saftig P, Yokoshima S, Fukuyama T, Matsuki N, Koyama R, Tomita T, Iwatsubo T.
Neuron 76:410-422 (2012)

シナプスは神経活動に応じて結合様式や形を変えることが知られています。シナプス形成の異常は自閉症などの精神性疾患の原因となることが知られており、現在、シナプス形成に関わる分子の特定が盛んに行われています。しかし、いまだ不明の点が多く、特に、神経活動からシナプス形成までの一連の流れについてはほとんど調べられていませんでした。我々は、興奮性シナプス形成に必須の分子であり、自閉症の発症と関連が示されているシナプス膜タンパク質Neuroliginに着目しました。そして、まず興奮性の神経活動によって、タンパク質切断酵素であるプロテアーゼが活性化しNeuroliginが切断を受けること、その結果Neuroliginの量が減少して、神経細胞シナプス形成が制御されるという一連の流れを見出しました。また切断現象の責任プロテアーゼとしてADAM10とγセクレターゼの関与を明らかにしました。  本研究成果は、プロテアーゼによる、シナプス膜タンパク質切断がシナプスの形成と機能を制御している可能性を示した点で重要です。シナプス形成に関わる分子自体が、そもそもどのように制御を受けているのかを調べ、神経活動からシナプス形成までの全体像を初めて明らかにした成果です。今後、シナプス形成に関わる分子ではなく、その量を決めるプロテアーゼが、自閉症治療薬開発の重要な創薬標的分子となりうることも示唆されます。

東京大学のプレスリリースはこちらです。

本研究成果はNeuron掲載誌の「SPOTLIGHT ON」としてトップページに取り上げられ、Neuron公式ツイッターアカウントActiveZoneにて"3 new papers in Neuron related to neuroligin-1 roles at synapses"とツイートされました。

本論文に関する日経バイオテクからの報道はこちらです。

本論文に関するマイナビニュースからの報道はこちらです。

本論文については平成24年10月19日付で日経産業新聞に、平成24年10月23日付で日刊工業新聞に、平成24年10月30日付で毎日新聞と、東京大学新聞に掲載されました。

本論文に関するAlzforumのニュースはSPOTLIGHTとして取り上げられました。

なお本研究を含めた関連研究について、Webinarによるオンラインディスカッションが2012年11月1日行われ、Webinarサイトよりセミナー内容が公開されています。

本研究の日本語での説明がライフサイエンス 新着論文レビューより公開されています。





新しい論文がThe Journal of Biological Chemistryに発表されました。

Contribution of the γ-secretase subunits to the formation of catalytic pore of presenilin 1

Koji Takeo, Naoto Watanabe, Taisuke Tomita and Takeshi Iwatsubo
The Journal of Biological Chemistry 287(31):25834-25843 (2012) First Published on June 11, 2012

γセクレターゼはアルツハイマー病発症にかかわるアミロイドβタンパク質の前駆体を切断する酵素です。この切断酵素はプレセニリン(PS)、ニカストリン、Aph-1、Pen-2の4つのサブユニットで構成される膜蛋白複合体ですが、活性中心ポア構造がどのように形成されるかについては分かっていませんでした。今回我々はPSの活性中心ポアの構造が他のサブユニットによって制御されている様子を世界で初めて解明しました(スキーム)。サブユニットの結合によって、PSの活性中心ポア構造内のアミノ酸残基に対する水分子のaccessibilityが減少すること、および各アミノ酸残基間の距離が短くなることを発見し、活性中心ポア構造が空間的に限定されることを示しました。これらの情報は、γセクレターゼを標的とする治療薬の開発において重要な知見であると考えられます。



超早期アルツハイマー病の画像診断・バイオマーカー・臨床指標の確立を目指したJ-ADNIへの取り組みにより、岩坪威教授が2012年ポタムキン賞を受賞しました。

ポタムキン賞ホームページはこちらです。

本受賞に関する東京大学からのプレスリリースはこちらです。

本受賞に関するNEDOからのプレスリリースはこちらです。


新しい論文がThe Journal of Biological Chemistryに発表されました。

Phosphorylation of α-synuclein at Ser129 reduces neuronal dysfunction by lowering its membrane-binding property in Caenorhabditis elegans

Tomoki Kuwahara, Reina Tonegawa, Genta Ito, Shohei Mitani and Takeshi Iwatsubo
The Journal of Biological Chemistry 287(10):7098-7109 (2012) First Published on January 9, 2012, doi: 10.1074/jbc.M111.237131

近年、無脊椎動物である線虫C.elegansの神経系がパーキンソン病における神経変性のモデルになりうることが示唆されています。私達は代表的な家族性パーキンソン病病因遺伝子であるαシヌクレインおよび各種変異体を神経系に発現させた線虫を用いて、パーキンソン病脳内で特徴的なαシヌクレインのセリン129位リン酸化の役割について解析しました。その結果、αシヌクレインのリン酸化は自身の膜結合性を低下させることにより、神経保護的に働く役割を持つことを見出しました。本知見はαシヌクレインリン酸化をターゲットとした創薬を指向する上で重要な足がかりになるものと期待されます。本研究は東京女子医科大学三谷昌平教授との共同研究成果です。



"アルツハイマー病:βアミロイドをめぐる分子病態と先制医療への展望"により、岩坪威教授、富田泰輔准教授が第48回(2011年度)ベルツ賞2等賞を受賞しました。

ベルツ賞ホームページはこちらです。


新しい論文がBiochemical Journalに発表されました。

Re-examination of the dimerization state of leucine-rich repeat kinase 2: predominance of the monomeric form
(Leucine-rich repeat kinase 2の2量体に関する再検討)

Genta Ito and Takeshi Iwatsubo
Biochemical Journal 441(3):987-994 (2012) doi:10.1042/BJ20111215

家族性パーキンソン病(PARK8)の病因遺伝子産物leucine-rich repeat kinase 2(LRRK2)は、2量体として機能することが示唆されていました。しかしながら、私たちは、様々な生化学実験の結果をもとに、LRRK2が実際には主に単量体として存在すること、および2量体化はLRRK2の機能に影響を与えないことを明らかにしました。LRRK2の性状に関するこれまでの誤った理解を修正し、さらに詳細な生化学的性状や機能制御メカニズムに迫る足がかりとなる重要な知見です。



新しい論文がThe EMBO Journalに発表されました。

Phenylpiperidine-type γ-secretase modulators target the transmembrane domain 1 of presenilin 1
(アルツハイマー病根本治療薬候補分子γセクレターゼモジュレーターの作用標的と機序の解明)

Yu Ohki, Takuya Higo, Kengo Uemura, Naoaki Shimada, Satoko Osawa, Oksana Berezovska, Satoshi Yokoshima, Tohru Fukuyama, Taisuke Tomita and Takeshi Iwatsubo
The EMBO Journal 30(23):4815-4824 (2011) advance online publication 14 October 2011; doi:10.1038/emboj.2011.372

我々は世界で初めてγセクレターゼモジュレーター(GSM)の結合部位の同定に成功しました。毒性分子種であるAβ42産生を特異的に抑制するGSMはアルツハイマー病根本治療薬として期待されています。私たちは、このGSMの分子機構を探るため、ケミカルバイオロジーと生化学的手法を駆使し、GSM-1という化合物がγセクレターゼの活性中心サブユニットであるプレセニリンの第1膜貫通領域に直接結合し、アロステリックな構造変化を引き起こすことでγセクレターゼ活性を制御することを見出しました。この第1膜貫通領域とGSMの結合様式の解明は、GSMのラショナルなドラックデザインにつながるものであり、新たな観点からのアルツハイマー病根本的治療薬の開発に貢献するものと考えられます。本研究は本学天然物合成化学教室横島聡准教授、福山透教授ら、米国マサチューセッツジェネラルホスピタルOksana Berezovska准教授、植村健吾研究員らとの共同研究により進められました。

本研究内容は2011年12月5日付で信濃毎日新聞に掲載されました。詳細については図をクリックしてください





新しい論文がOncogeneに発表されました。

Neutralization of the γ-secretase activity by monoclonal antibody against extracellular domain of nicastrin
(Nicastrinを標的としたγセクレターゼ活性中和抗体を樹立)

I Hayashi, S Takatori, Y Urano, Y Miyake, J Takagi, M Sakata-Yanagimoto, H Iwanari, S Osawa, Y Morohashi, T Li, P C Wong, S Chiba, T Kodama, T Hamakubo, T Tomita and T Iwatsubo
Oncogene advance online publication, July 4, 2011; doi:10.1038/onc.2011.265

我々は世界で初めてNicastrinを標的としたγセクレターゼ活性中和抗体の樹立に成功しました。これまでに報告されたすべてのγセクレターゼ阻害剤はPSを標的分子とすることが示されています。一方、NCTは構成因子の中で最大の細胞外領域を有し、γセクレターゼが基質を捕捉する際に働く「基質受容体」であることが示唆されています。私たちは、このNCTを標的とした新規γセクレターゼ活性制御法のラショナルデザインを目指し、NCTに対する特異的抗体がγセクレターゼ活性に対する機能阻害抗体として働き、アミロイドβ蛋白の産生を抑制する他、γセクレターゼ活性依存性に増殖を示すがん細胞の腫瘍形成を抑制することを見出しました。A5226Aは、γセクレターゼ阻害剤として初めてPS以外の構成因子を作用点とするものであり、その活性阻害機序の解明を通じてγセクレターゼの基質切断機構に新たな知見をもたらすことが期待されます。本研究は東京大学先端科学技術研究センターの浜窪隆雄・児玉龍彦両教授、筑波大学大学院血液内科の千葉滋教授、大阪大学蛋白質研究所の高木淳一教授らとの共同研究により進められました。




新しい論文がThe Journal of Biological Chemistryに発表されました。

Three-dimensional structure of the signal peptide peptidase
(Signal peptie peptidaseの三次元構造を解析)

Hiroyuki Miyashita, Yuusuke Maruyama, Hayato Isshiki, Satoko Osawa, Toshihiko Ogura, Kazuhiro Mio, Chikara Sato, Taisuke Tomita, and Takeshi Iwatsubo
J. Biol. Chem. 2011 286(29):26188-26197. First Published on June 2, 2011, doi:10.1074/jbc.M111.260273

我々は世界で初めてSignal peptide peptidase(SPP)の三次元構造を明らかにしました。SPPはγセクレターゼの活性中心サブユニットPresenilinと同じ膜内配列切断酵素ファミリーに属し、C型肝炎ウイルスやマラリアの増殖などに関わることが知られている、新規創薬標的分子です。我々はSPPの立体構造の理解を目剤し、単粒子解析による構造解析を行いました。その結果、SPPが4量体構造をとって活性を発揮すること、内部に親水性環境をもつ弾丸様構造をとること、またSPPのN末端領域がその4量体構造の形成に必要であることを見出しました。活性型SPP構造の理解はC型肝炎などの画期的創薬に繋がる可能性があります。本研究は産業技術総合研究所・バイオメディカル研究部門・佐藤主税先生のグループとの共同研究により進められました。




新しい論文がThe Journal of Neuroscienceに発表されました。

BACE1 Activity Is Modulated by Cell-Associated Sphingosine-1-Phosphate
(BACE1活性は細胞内在性のスフィンゴシン1リン酸により制御される)

Nobumasa Takasugi, Tomoki Sasaki, Kunimichi Suzuki, Satoko Osawa, Hayato Isshiki, Yukiko Hori, Naoaki Shimada, Takuya Higo, Satoshi Yokoshima, Tohru Fukuyama, Virginia M.-Y. Lee, John Q. Trojanowski, Taisuke Tomita, and Takeshi Iwatsubo
The Journal of Neuroscience 31:6850-6857 (2011)

我々は世界で初めてリゾリン脂質の一つであるスフィンゴシン1リン酸(S1P)が神経細胞においてβセクレターゼであるBACE1の活性を制御する因子であることを見出しました。S1Pは様々な生理活性を持つことが知られている脂質で、その産生酵素の一つSphingosine kinase2により合成されるS1PがBACE1活性制御に関与していること、またこのKinase活性がアミロイド線維により亢進することや、アルツハイマー病患者脳において上昇していることを明らかにしました。すなわち、アミロイド毒性がS1P産生を亢進させ、BACE1活性が上昇し、さらなるAβ産生を引き起こす、Vicious cycleが想定されました。すなわち、S1P産生・代謝経路の異常がアルツハイマー病発症過程および増悪化に大きく関与している可能性が考えられ、新たな治療薬標的パスウェイとなることが期待されます。

本研究内容はAlzforumに"Lipid Modulator Offers New Route to BACE1 Inhibition"としてfeatureされました。

本研究内容は2010年10月8日付で信濃毎日新聞に掲載されました。詳細については図をクリックしてください




新しい論文がThe Journal of Neuroscienceに発表されました。

Participation of transmembrane domain 1 of presenilin 1 in the catalytic pore structure of the γ-secretase
(Presenilin 1の第一膜貫通領域は活性中心ポア構造を形成している)

Shizuka Takagi, Aya Tominaga, Chihiro Sato, Taisuke Tomita, and Takeshi Iwatsubo
The Journal of Neuroscience 30:15943-15950 (2010)

これまで、γセクレターゼの活性中心サブユニットプレセニリンについてはシステインケミストリーを用いた構造解析法SCAMを用いて活性中心ポア構造の存在を示してきました。今回、世界で初めてプレセニリンのアミノ末端側の第一膜貫通領域の構造解析に成功し、活性中心ポア構造に直接面していることを明らかにしました。そして基質の選択性にも関わっていることをあきらかにしました。さらに阻害剤を利用した解析から、この膜貫通領域が切断過程においてピストン様の上下運動をしていることが示唆されました。これは世界で初めてγセクレターゼのダイナミックな構造変化を示唆した研究成果であり、今後の解析から、γセクレターゼによる膜内配列切断機構についてさらに詳細なメカニズムが明らかになることが期待されます。



第29回日本認知症学会において、ポスター発表"γセクレターゼモジュレーターGSM-1はプレセニリンN末端断片を標的とする"により、富田泰輔准教授が学会奨励賞(基礎研究部門)を受賞しました。

学会ホームページはこちらです。


セクレターゼ活性阻害・制御薬に関する最新の知見について、2010年10月8日付で信濃毎日新聞に掲載されました

「予防薬研究 酵素にも注目」

詳細については図をクリックしてください。



新しい論文がThe Journal of Neuroscienceに発表されました。

A noncompetitive BACE1 inhibitor TAK-070 ameliorates A pathology and behavioral deficits in a mouse model of Alzheimer's disease
(非競合型BACE1阻害薬TAK-070はアルツハイマー病モデルマウスのAβ病理と行動異常を改善する)

Hiroaki Fukumoto, Hideki Takahashi, Naoki Tarui, Junji Matsui, Taisuke Tomita, Mitsuhiro Hirode, Masumi Sagayama, Ryouta Maeda, Makiko Kawamoto, Kazuko Hirai, Jun Terauchi, Yasufumi Sakura, Mitsuru Kakihana, Kaneyoshi Kato, Takeshi Iwatsubo, Masaomi Miyamoto
The Journal of Neuroscience vol. 33 pp. 11157-11166 (2010)

BACE1はアミロイドβペプチド(Aβ)産生の律速酵素であり、Aβ抑制療法の標的分子として注目されてきましたが、その阻害薬開発は遅れていました。今回、武田薬品工業創薬研究所の福元宏明主席研究員と我々は、経口投与によりADモデルトランスジェニック(Tg2576)マウス脳でBACE1を抑制する低分子化合物TAK-070の開発に成功しました。TAK-070は(R)-6-[(1,1'-biphenyl)-4-ylmethoxy]- 1,2,3,4-tetrahydro-N,N-dimethyl-2-naphthaleneethanamine hydrochlorideというユニークな構造を持ち、BACE1の膜貫通部分に結合することにより、非競合的にBACE1を抑制するものと考えられます。培養細胞におけるAβ産生抑制能は比較的modestであるものの、Tg2576マウス脳でも同程度にAβ産生を抑制し、その効果は慢性投与実験でも保持されました。またTAK-070の投与はTg2576マウスのY-maze, Morris water maze, novel object recognition などの行動試験における異常を改善しました。TAK-070に代表される、脳移行性の高い経口BACE1低分子阻害薬の、近未来における臨床応用がおおいに期待されます。

本研究内容はAlzforumに"Getting to First BACE: BACE1 Inhibition Takes A Step Forward"としてfeatureされました。



2010年度包括脳ネットワーク 夏のワークショップにおいて、当研究室一色君のポスター"Identification and functional analysis of a substrate-specific genetic modulator for γ-secretase cleavage"包括脳ネットワーク優秀若手賞(神経科学学会賞、審査分野:病態)を受賞しました!

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ICAD2010にて、岩坪教授がHenry Wisniewski Lifetime Achievement Awardを受賞しました!

免疫染色を用いた老人斑におけるAβ42の存在の証明から、γセクレターゼの機能構造生物学、パーキンソン病におけるレビー小体の精製とシヌクレインの同定、そして近年ではJ-ADNIの臨床研究に至るmultidisciplinaryな功績が認められました。

At AAICAD 2010, the 2010 Henry Wisniewski Lifetime Achievement Award was presented to Dr. Takehsi Iwatsubo. Dr. Iwatsubo is a neuropathologist/neurologist who has contributed to the elucidation of the pathomechanism of human neurodegenerative disorders, especially Alzheimer’s disease, using multidisciplinary approaches. He demonstrated that Aβ42 is the initially and predominantly deposited species in senile plaque amyloid by immunohistochemistry using specific antibodies. He demonstrated that mutations in presenilin genes cause familial Alzheimer’s disease by increasing the production of Aβ42, elucidated the process of formation of γ-secretase complex, and showed that the γ-secretase complex harbors a water-permeable pore through which intramembrane proteolysis takes place. He also developed a method to isolate and purify Lewy bodies from human brains and showed that α-synuclein, a hyperphoshorylated form, is a component of Lewy bodies. He recently lead the Japanese Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative (ADI),; initiated a nationwide longitudinal imaging/biomarker study on MCI and Alzheimer’s disease, aiming at bridging the basic disease neuroscience to the clinic; and worked to develop standard surrogate markers for clinical trials of disease-modifying drugs for Alzheimer’s disease.

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新しい論文がBioorganic & Medicinal Chemistry Lettersに発表されました。

Novel Notch-sparing γ-secretase inhibitors derived from a peroxisome proliferator-activated receptor agonist library
(PPARγアゴニストライブラリーよりNotch活性を阻害しない新規γセクレターゼ阻害剤を同定)

Motonori Kurosumi, Yoshino Nishio, Satoko Osawa, Hisayoshi Kobayashi, Takeshi Iwatsubo, Taisuke Tomita, Hiroyuki Miyachi
Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters in press

γセクレターゼ阻害剤はアルツハイマー病の根本治療薬として期待されていますが、細胞の分化・維持に関わるNotchシグナルにも必要なプロテアーゼであるため、その単純な阻害は重篤な副作用を惹起します。我々は新規γセクレターゼ阻害剤の探索を行うべく、PPARγアゴニスト誘導体ライブラリーを探索し、Notchシグナルを保持したままAβ産生を抑制する新規Notch-sparing GSIの同定と開発に成功しました。本化合物は新規治療薬開発のシードとなる他、基質特異的な阻害剤開発にを目指したケミカルバイオロジー研究において重要なプローブとなることが期待されます。本研究は岡山大学宮地弘幸教授との共同研究成果です。




新しい論文がThe Journal of Biological Chemistryに発表されました。

Functional analysis of the transmembrane domains of presenilin 1: Participation of transmembrane domains 2 and 6 in the formation of initial substrate-binding site of γ-secretase
(PS1の第2、6膜貫通領域が基質結合部位形成に重要であることを発見)

Naoto Watanabe, Shizuka Takagi, Aya Tominaga, Taisuke Tomita, Takeshi Iwatsubo
The Journal of Biological Chemistry 2010 285: 19738-19746. First Published on April 23, 2010, doi:10.1074/jbc.M110.101287

γセクレターゼはプレセニリン、ニカストリン、Aph-1、Pen-2を最小構成因子とする膜蛋白複合体です。活性中心サブユニットであるプレセニリンには活性中心ポア構造の他、基質を脂質二重膜内で側方より捕捉する基質結合部位(Initial substrate-binding site)の存在が示唆されています。本研究においてはシステマチックにプレセニリン1(PS1)の膜貫通領域(TMD)を置換してその変異体の機能解析を行う、以前の研究(Watanabe et al., JBC 2005)をさらに進めました。そして各TMDが活性型γセクレターゼ形成過程において果たす役割について明らかにしました(スキーム)。また化合物を利用したケミカルバイオロジーや、システインを用いたクロスリンク実験などを活用し、TMD2とTMD6がPS1の基質結合部位形成に重要であることを明らかにしました。PSの基質結合部位の詳細を明らかにすることによって、基質特異的なγセクレターゼ活性制御、すなわち、副作用の少ないアルツハイマー病治療薬創成につながる可能性があります。

本研究内容はAlzforumに"Divide and Conquer: Structure-Function Victories With Presenilin 1"としてfeatureされました(http://www.alzforum.org/new/detail.asp?id=2431)。




新しい論文がBioorganic & Medicinal Chemistry Lettersに発表されました。

Development of Photoaffinity Probes for gamma-Secretase Equipped with a Nitrobenzenesulfonamide-type Cleavable Linker
(穏和な条件でタンパク質精製可能な新規ニトロベンゼンスルホンアミド型リンカーを持つ光親和性標識プローブを開発)

Satoshi Yokoshima, Yuzo Abe, Naoto Watanabe, Yoichi Kita, Toshiyuki Kan, Takeshi Iwatsubo, Taisuke Tomita, Tohru Fukuyama
Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 2009 Dec 15;19(24):6869-6871. Epub 2009 Oct 23.

γセクレターゼはプレセニリン、ニカストリン、Aph-1、Pen-2を最小構成因子とする膜蛋白複合体ですが、非常に大きな複合体を形成していることなどから、その構成因子には多様性があることが示唆されています。したがってそれぞれ特有のγセクレターゼ複合体を効率よく、穏和な条件で精製することが求められています。また我々は光親和性標識実験による各γセクレターゼ阻害剤と標的分子を架橋して解析を行ってきましたが、その結合部位のために阻害剤と蛋白の高効率精製法の確立が必要でした。今回、私たちは還元条件下で効率よく切断されるニトロベンゼンスルホンアミド官能基を含む新規リンカーの開発に成功しました。今後このリンカーをさらに改変していくことで、各種阻害剤に結合するgセクレターゼ複合体の新規構成因子の同定につながることが期待されます。本研究は、本学天然物合成化学教室(福山透教授、横島聡講師)との共同研究成果です。




新しい論文がCancer Scienceに発表されました。

Dual antitumor mechanisms of Notch signaling inhibitor in a T-cell acute lymphoblastic leukemia xenograft model.
(γセクレターゼ阻害剤がT細胞性急性リンパ性白血病に治療効果を示すメカニズムを解明)

Shigeo Masuda, Keiki Kumano, Takahiro Suzuki, Taisuke Tomita, Takeshi Iwatsubo, Hideaki Natsugari, Arinobu Tojo, Makoto Shibutani, Kunitoshi Mitsumori, Yutaka Hanazono, Seishi Ogawa, Mineo Kurokawa and Shigeru Chiba
Cancer Science 2009; 100: 2444-2450

γセクレターゼはアルツハイマー病にかかわるアミロイドβ産生のみならず、細胞の分化・維持に深くかかわるNotchシグナリングに必要な酵素です。近年、Notchシグナルの異常がさまざまながんの発症にかかわることが示されつつあり、γセクレターゼ活性制御によるがん治療法開発が注目を浴びています。今回私たちはγセクレターゼ阻害剤がT細胞性急性リンパ性白血病モデルに有効であることを示し、その分子機構について、がん細胞をアポトーシスに導くcell autonomousな効果と、血管新生に対するnon cell autonomousな効果があることを明らかにしました。本研究は筑波大学千葉滋教授、帝京大学夏苅英昭教授との共同研究成果です。



新しい論文がBiochemistryに発表されました。

Identification of autophosphorylation sites of LRRK2
(LRRK2の自己リン酸化部位の同定)

Shogo Kamikawaji, Genta Ito, Takeshi Iwatsubo
Biochemistry 2009 Nov 24;48(46):10963-10975.

under construction



新しい論文がThe Journal of Neuroscienceに発表されました。

Aβ immunotherapy: intracerebral sequestration of Aβ by an anti-Aβ monoclonal antibody 266 with high affinity to soluble Aβ
(Aβ免疫療法:可溶性Aβに親和性の高い抗Aβモノクローナル抗体266による脳内でのAβの隔離)

Kaoru Yamada, Chiori Yabuki, Peter Seubert, Dale Schenk, Yukiko Hori, Sumio Ohtsuki, Tetsuya Terasaki, Tadafumi Hashimoto, Takeshi Iwatsubo
The Journal of Neuroscience vol.29 pp. 11393-11398 (2009)

アルツハイマー病の病因にはAβペプチドからなるβアミロイドの脳内蓄積が重要と考えられています。共同研究者のSchenk博士は、Aβを接種したアミロイド前駆体トランスジェニックマウス脳でβアミロイドの蓄積が顕著に抑制されることから「Aβワクチン療法」を開発しました。この効果は血液中に産生された抗Aβ抗体によることが示され、現在ヒト化抗Aβ抗体を投与する受動免疫療法の臨床治験が開始されています。しかし、脳の外から投与された抗体が、どのようなメカニズムによって脳内のAβ蓄積を抑制するのかは不明でした。特に、現在治験の進められている抗体のいくつかは、血液中で作用し、脳からのAβ排出を促進する(「シンク効果」)と信じられてきましたが、それを実証する知見はありませんでした。今回私たちは、シンク効果を生じると考えられてきた代表的なモノクローナル抗体266が、脳からAβを引き抜くのとは逆に、脳内に進入して治療効果を生じていることを示しました。アルツハイマー病の脳では、単量体型で産生されたAβが、障害性の高いオリゴマーを経て、アミロイドとして蓄積するものと考えられています。今回の結果は、抗Aβ抗体が脳内に進入して可溶・単量体型のAβに結合、これをオリゴマーやアミロイド等の多量体の形成過程から隔離し、阻害するという新規の作用メカニズムを提起するものです。以上の研究内容については、こちら(PDFファイル)もご覧ください。




新しい論文がThe Journal of Biological Chemistryに発表されました。

Single chain variable fragment against Nicastrin inhibits the γ-secretase activity
(Nicastrinに対する単鎖抗体によりγセクレターゼ活性を抑制する方法を開発)

Ikuo Hayashi, Sho Takatori, Yasuomi Urano, Hiroko Iwanari, Noriko Isoo, Satoko Osawa, Maiko A. Fukuda, Tatsuhiko Kodama, Takao Hamakubo, Tong Li, Philip C. Wong, Taisuke Tomita, and Takeshi Iwatsubo
The Journal of Biological Chemistry 2009 Oct 9;284(41):27838-27847. Epub 2009 Aug 14.

今回、私たちは世界で初めてモノクローナル抗体誘導体を用いたγセクレターゼ活性制御法の開発に成功しました。γセクレターゼはアルツハイマー病脳に蓄積するAβペプチドの産生を行う膜結合型複合体を本態とする酵素です。その構成因子の一つであるニカストリン(Nicastrin)は大きな細胞外領域を持ちます。今回ニカストリンの細胞外領域に対する新規モノクローナル抗体の樹立に成功し、この抗体を基に単鎖抗体を作出しました。この単鎖抗体を培養細胞に発現させたところ、ニカストリン細胞外領域の糖鎖修飾および構造異常を惹起することでγセクレターゼの不安定化を引き起こし、Aβペプチド産生が抑制されることを見出しました。この結果は、ニカストリンの細胞外領域がγセクレターゼの安定性及び活性に重要な役割を果たしていることを示します。またニカストリンがγセクレターゼ活性を制御する創薬標的となりうることを世界で初めて示しました。将来的には、生物製剤の一つとして着目されている「抗体医薬」によるγセクレターゼ活性の制御法開発へつながることが期待されます。本研究は本学先端研 児玉龍彦教授、浜窪隆雄教授との共同研究成果です。




2009年度米国神経科学会(Society for Neuroscience 2009)のプレス向けメディア資料において、当研究室からの下記演題がHot topicsとして選ばれました!

Title: Helical β-peptide foldamers specifically inhibit the γ-secretase activity
Authors: T. TOMITA, Y. IMAMURA, N. WATANABE, T. IWATSUBO, N. KATO, N. UMEZAWA, T. HIGUCHI


新しい論文がJournal of the American Chemical Societyに発表されました。

Inhibition of γ-secretase activity by helical β-peptide foldamers
(ヘリックス構造を固定化したβペプチドフォルダマーが新規γセクレターゼ阻害剤であることを発見)

Yuki Imamura, Naoto Watanabe, Naoki Umezawa, Takeshi Iwatsubo, Nobuki Kato, Taisuke Tomita, Tsunehiko Higuchi
J Am Chem Soc in press

アルツハイマー病脳に老人斑として蓄積するAβペプチドの産生にかかわるγセクレターゼは重要な創薬標的分子ですが、その単純な阻害は発生・分化にかかわるNotchシグナルの抑制などによる副作用が予見されており、γセクレターゼの基質認識および切断機構に基づいたラショナルな活性制御化合物の開発が求められています。今回βアミノ酸と呼ばれる非天然アミノ酸を用い、基質となる膜貫通領域を模倣するヘリックス構造を固定したβペプチドフォルダマーが強力なγセクレターゼ阻害剤となることを見出しました。また光親和性標識法などのケミカルバイオロジー的手法を駆使することで、その作用点がγセクレターゼの基質認識部位であることを明らかにしました。今後このフォルダマーのデザインを改変していくことで、Aβペプチドの産生のみを特異的に抑制することが可能な、基質特異的γセクレターゼ阻害剤の開発につながることが期待されます。本研究は、名古屋市立大学精密有機反応学分野(樋口恒彦教授、梅澤直樹准教授)との共同研究成果です。

詳細はこちら(PDFファイル)




当研究室大学院生の高木さんが平成20年度第2回学生表彰「東京大学総長賞」を受賞しました!

受賞内容要約:γセクレターゼは、アルツハイマー病の病因タンパク質アミロイドβを作り出す酵素であり、根本治療薬開発においてターゲットタンパク質として注目されている。高木氏は、γセクレターゼの詳細な構造をシステイン置換法(SCAM)と呼ばれる手法を用いて解明し、γセクレターゼ阻害剤の分子機構を明らかにした。この研究成果は、治療薬開発において重要な情報をもたらすものであるとして、国際アルツハイマー病学会において多くの研究者や製薬企業からの耳目を集め、アルツハイマー病研究者のためのネットコミュニティAlzforumにおいて高い評価を得た。このような業績および「意志あるところに道あり」をモットーとする研究姿勢が高く評価された。

授与式は3/23に行われます。


岩坪教授がMetlife賞を受賞しました!

MetLife Foundation to Award Scientists for Research in Alzheimer's Disease Each winner receives a $200,000 research grant and personal prize of $50,000
The MetLife Foundation Awards for Medical Research in Alzheimer's Disease, honoring scientists who have demonstrated significant contributions to the understanding of Alzheimer's disease, will be held at a special scientific briefing and luncheon.
The award ceremony will take place February 18 at the St. Regis Hotel in Washington, D.C.
This year, the awards will be presented to two prominent scientists whose groundbreaking research has led to significant understanding of Alzheimer's and the substances in the brain that play an important role in the disease. Each winner receives a $200,000 research grant and personal prize of $50,000, to further their work.

Recipients include:
Michael S. Wolfe, Ph.D., professor of neurology at Harvard Medical School and Brigham and Women's Hospital recognized for his research on the production of amyloid-beta, a small protein found in the Alzheimer's brain now believed to be the fundamental toxic entity initiating the disease, which has led to the development of new therapies for Alzheimer's.

Takeshi Iwatsubo, M.D., professor in the Department of Neuropathology in the Graduate School of Medicine at the University of Tokyo honored for his work on the histopathology and protein biochemistry of postmortem human brains with Alzheimer's, which has led to the establishment of cellular and genetic models that help explain the key steps in the pathological cascade of neurodegeneration.

詳細はこちら(PDFファイル)をご覧ください

Alzforumでも紹介されました!


第15回武田科学振興財団生命科学シンポジウムにおいて、当研究室一色君のポスター" Identification and analysis of a substrate-specific genetic modulator for gamma-secretase activity."ポスター賞を受賞しました!


第3回Notch研究会(若手の会)において、当研究室林さんのポスター"The role of Notch signaling in synaptogenesis"ポスター賞を受賞しました!


新しい論文がThe Journal of Biological Chemistryに発表されました。

The Low Density Lipoprotein Receptor-related Protein 1 Mediates Uptake of Amyloid β Peptides in An In Vitro Model of the Blood-Brain Barrier Cells.

Kaoru Yamada, Tadafumi Hashimoto, Chiori Yabuki, Yusuke Nagae, Masanori Tachikawa, Dudley K. Strickland, Qiang Liu, Guojun Bu, Jacob M. Basak, David M. Holtzman, Sumio Ohtsuki, Tetsuya Terasaki and Takeshi Iwatsubo
The Journal of Biological Chemistry in press Oct. 21, 2008

under construction



新しい論文がHuman Molecular Geneticsに発表されました。

A Systematic RNAi Screen Reveals Involvement of Endocytic Pathway in Neuronal Dysfunction in α-Synuclein Transgenic C. elegans
(トランスジェニック線虫を用いた網羅的RNAiスクリーニングによりエンドサイトーシス経路がα-シヌクレイン神経障害性に関与することを発見)

Tomoki Kuwahara, Akihiko Koyama, Shingo Koyama, Sawako Yoshina, Chang-Hong Ren, Takeo Kato, Shohei Mitani, and Takeshi Iwatsubo
Human Molecular Genetics Advance Access published on July 9, 2008. doi:10.1093/hmg/ddn198

パーキンソン病やレビー小体型認知症では脳内にα-シヌクレインが蓄積し、またα-シヌクレイン遺伝子の変異はこれらの疾患を引き起こすことが知られています。今回、ヒトα-シヌクレインを神経系に過剰発現する線虫(C. elegans)を作出し、さらにα-シヌクレイン発現依存的に神経障害性を引き起こす遺伝子を網羅的RNAiスクリーニングにより探索しました。その結果、アダプタータンパク質AP-2のサブユニットをはじめとするエンドサイトーシス関連遺伝子の抑制により、α-シヌクレインによる神経障害性が増強されることが分かりました。本研究で作出した線虫はヒト疾患の病態を再現するモデルとして今後薬物スクリーニングなど創薬への応用が期待されます。


上図:AP-2 αサブユニットapa-2のRNAiにより、α-シヌクレイン発現ライン(右)特異的に成長阻害が認められる。
下図:α-シヌクレインによる神経障害モデル。エンドサイトーシスの過度の抑制により神経障害性が引き起こされる。



新しい論文がThe Journal of Neuroscienceに発表されました。

The C-terminal PAL motif and transmembrane domain 9 of Presenilin 1 are involved in the formation of the catalytic pore of the γ-secretase
(プレセニリン1のC末端のPALモチーフと第9膜貫通部位はγセクレターゼの活性中心ポア形成に関与する)

Chihiro Sato, Shizuka Takagi, Taisuke Tomita and Takeshi Iwatsubo
The Journal of Neuroscience 28: 6264-6271 (2008), doi:10.1523/JNEUROSCI.1163-08.2008

当教室からの研究成果がAlzforumにおいてトップ記事としてfeatureされました!

2008年3月Keystone meetingにおいて発表した、γ-secretaseに関する構造活性相関解析に関する最新の知見について、Alzforumの"Keystone Basic Science News"のトップ記事としてfeatureされました("γ Slowly Relinquishes Its Secrets" http://www.alzforum.org/new/detail.asp?id=1812)。γ-secretaseによる膜内配列切断機構において、どのようにして基質が活性中心ポアに移動してくるのかについて、システインケミストリーを利用したSCAMにより解明した成果です。以上の研究内容については、こちら(PDFファイル)もご覧ください。




当教室からの論文"The role of presenilin cofactors in the gamma-secretase complex. Nature. 2003 Mar 27;422(6930):438-41."、および"APP processing and synaptic function. Neuron. 2003 Mar 27;37(6):925-37."がAlzforumにおいて2003年度Milestone Paperとして選出されました!

Alzforum(http://www.alzforum.org/)は全世界のアルツハイマー病・神経変性疾患研究者が自由に参加できるウェブ上のサイエンスコミュニティです。原著研究論文の中でもNewsとなったものや高いCitationを持つ論文は、出版されて4年後に"Milestone nominees"として、選出されます。その中から各研究者によってオンライン投票が行われ、現在のアルツハイマー病研究に大きな進歩・理解をもたらした論文が"Milestone paper"として選出されます。私たちの研究成果がこのようにサイエンスコミュニティから認められたことは大変名誉なことであり、今後も未来につながる研究を展開させていきたいと考えています。


当研究室からの論文"Divergent Synthesis of Multifunctional Molecular Probes Enabled Elucidation of the Enzyme Specificity of Dipeptidic gamma-Secretase Inhibitors on Presenilin-Type Aspartic Proteases."がMost-Accessed Articles: July-September, 2007で15位を、Most-Cited Articles published in 2007 and cited through the period ending December 31, 2007で10位を獲得しました!


当研究室からの論文"GTP binding is essential to the protein kinase activity of LRRK2, a causative gene product for familial Parkinson's disease."がBiochemistry誌のMost-Accessed Articles: January-March, 2007で16位を、Most-Cited Articles Published in 2007で6位を獲得しました!


新しい論文がNeuroscience Lettersに発表されました。

Cytoplasmic localization and proteasomal degradation of N-terminally cleaved form of PINK1
(N末端が切断されたPINK1の細胞質局在とプロテアソームによる分解)

Sho Takatori, Genta Ito and Takeshi Iwatsubo
Neuroscience Letters 2008 430:13-17. Epub 2007 Nov 19.

PINK-1は劣性遺伝性のパーキンソニズムの病因遺伝子として同定されましたが、その代謝過程には不明の点が残されていました。今回PINK-1はアミノ末端側のシグナル配列によりミトコンドリアにターゲットされること、N末端を欠いた断片型PINK-1タンパク質がプロテアソームによる分解を受けることを明らかにしました。



新しい論文がACS Chemical Biologyに発表されました。

Divergent Synthesis of Multifunctional Molecular Probes to Elucidate the Enzyme Specificity of Dipeptidic γ-Secretase Inhibitors
(ジペプチド型γセクレターゼ阻害剤の酵素特異性について光親和性標識プローブを用いて解明)

Haruhiko Fuwa, Yasuko Takahashi, Yu Konno, Naoto Watanabe, Hiroyuki Miyashita, Makoto Sasaki, Hideaki Natsugari, Toshiyuki Kan, Tohru Fukuyama, Taisuke Tomita and Takeshi Iwatsubo
ACS Chemical Biology 2007 Jun 15;2(6):408-18. Epub 2007 May 25

近年、複数のγセクレターゼ阻害剤がPS型アスパラギン酸プロテアーゼであるSignal peptide peptidase(SPP)の活性も交叉阻害することが明らかとなっています。その一方でDAPTのようなγセクレターゼ特異的阻害剤の存在も知られていますが、その作用機序の違いについては不明でした。また分子プローブをツールとするケミカルバイオロジー研究においては、多様な標識基・リンカーを持つプローブの(フォーカスド)ライブラリー化およびその迅速なスクリーニングにより、プローブの機能を効率的に最適化することが不可欠です。そこで今回、クリックケミストリーを用い、多様な光親和性標識基およびリンカーと、ビオチン基を簡便かつ効率的に導入する合成法を確立しました。そして本合成法をジペプチド型γセクレターゼ阻害剤であり、かつSPPとも交叉阻害するCompound EおよびDBZに適用し、CE-BpB、DBZ-BpBの合成に成功しました。これらの化合物を光親和性標識プローブとして用い、CEおよびDBZがプレセニリンのN末端断片およびSPPを直接標的としていることを見出しました。またそのプレセニリン分子内での結合部位が、SPPに交叉阻害を示さないDAPTと位置・機能的に異なることを明らかにしました。本研究はケミカルバイオロジー的アプローチによってγセクレターゼ阻害剤の酵素特異性の分子機序の一端を明らかにしたという意味で、有意義な研究成果です。本研究は、本学COEプロジェクトの一つとして行われた、天然物合成化学教室・創薬理論科学教室との共同研究成果です。



新しい論文がThe Journal of Biological Chemistryに発表されました。

Aβ42 overproduction associated with structural changes in the catalytic pore of γ-secretase: common effects of Pen-2 amino-terminal elongation and fenofibrate
(Aβ42産生上昇に伴い セクレターゼの活性中心ポアが構造変化することを発見)

Noriko Isoo, Chihiro Sato, Hiroyuki Miyashita, Mitsuru Shinohara, Nobumasa Takasugi, Yuichi Morohashi, Shoji Tsuji, Taisuke Tomita, and Takeshi Iwatsubo
The Journal of Biological Chemistry 2007 282:12388-12396

老人斑としてアルツハイマー病脳に蓄積するAβペプチドのうち、特にAβ42は凝集性が高く、病初期から蓄積が見られること、また家族性アルツハイマー病を起こす遺伝子変異によりその産生が特異的に上昇することなどから、その発症機序に重要な役割を果たすことが指摘されています。今回γセクレターゼ構成因子Pen-2のN末タグによる変化をきっかけとして、Aβ42産生活性上昇に伴いγセクレターゼの活性中心ポアが構造変化していることを見出しました。この結果は、副作用の少ないアルツハイマー病治療薬への応用が期待されているγセクレターゼモジュレーターの作動機序を説明する可能性があります。引き続き活性中心ポアを含めたγセクレターゼの構造と活性の相関を検討していくことで、将来的に創薬につながることが期待されます。



新しい論文がBiochemistryに発表されました。

GTP binding is essential to the protein kinase activity of LRRK2, a causative gene product for familial Parkinson's disease
(家族性パーキンソン病病因遺伝子産物LRRK2のキナーゼ活性にはGTP結合が必須である)

Genta Ito, Takuro Okai, Go Fujino, Kohsuke Takeda, Hidenori Ichijo, Toshiaki Katada, Takeshi Iwatsubo
Biochemistry 2007 Feb 6;46(5):1380-1388. Epub 2007 Jan 13.

家族性パーキンソン病(PARK8)の病因遺伝子LRRK2は、家族性のみならず孤発性のパーキンソン病においてもアミノ酸変異が見られることから、パーキンソン病の病因への関与が注目されています。LRRK2蛋白質は、同一分子内に低分子量GTP結合蛋白質様のROCドメインと、キナーゼドメインを併せ持つユニークな構造が特徴的ですが、両者の機能的関連は不明でした。今回LRRK2が細胞内でGTP結合型として存在すること、GTP結合能を失った変異型LRRK2を用いて、ROCドメインへのGTP結合がLRRK2のキナーゼ活性にとって必須であることを明らかにしました。今後LRRK2の機能とその変異による異常を明らかにし、パーキンソン病の分子病態に迫る第一歩となる重要な基礎的知見です。



新しい論文がThe Journal of Biological Chemistryに発表されました。

The Tottori (D7N) and English (H6R) familial Alzheimer's disease mutations accelerate Aβ fibril formation without increasing protofibril formation
(Aβの家族性アルツハイマー病鳥取型変異(D7N)及び英国型変異(H6R)はプロトフィブリル形成促進を介さずアミロイド線維形成を促進する)

Yukiko Hori*, Tadafumi Hashimoto*, Yosuke Wakutani, Katsuya Urakami, Kenji Nakashima, Margaret M. Condron, Satoshi Tsubuki, Takaomi C. Saido, David B. Teplow, and Takeshi Iwatsubo (* contributed equally to this study)
The Journal of Biological Chemistry 2007 Feb 16;282(7):4916-4923. Epub 2006 Dec 14.

脳内に分泌されたAβが凝集する過程で神経細胞死を引き起こすことは、アルツハイマー病発症に重要なステップであると考えられている。そして近年、神経細胞死を起こすAβの分子種としてprotofibrilと呼ばれる可溶な凝集中間体が注目されている。今回堀らはAβ内部に位置し、家族性アルツハイマー病を引き起こす鳥取型(D7N)、英国型(H6R)の二つの点突然変異に注目し、これらの変異が構造変化の核形成には影響を与えないものの、その後の線維伸長を促進することを明らかにした。さらに線維伸長過程を詳細に検討したところ、二つの変異はArctic型変異(E22G)で見られるようなprotofibril形成の促進(図右)とは異なり、アミロイド線維自身の形成を促進している(図左)ことを見いだした。この結果は、protofibrilだけでなくアミロイド線維形成の促進もアルツハイマー病発症を引き起こすことを意味し、今後Aβ凝集メカニズム解明、そして凝集抑制を指標とするアルツハイマー病根本治療薬の開発に重要な知見を与えるものである。



新しい論文がThe Journal of Neuroscienceに発表されました。

Structure of the catalytic pore of γ-secretase probed by the accessibility of substituted cysteines
(γセクレターゼの活性中心ポア構造を解明)

Chihiro Sato, Yuichi Morohashi, Taisuke Tomita, Takeshi Iwatsubo
The Journal of Neuroscience 2006 Nov 15;26(46):12081-8
Selected as "This Week in The Journal"

疎水性である脂質二重膜内に存在する膜貫通配列に対して、どのようにしてγセクレターゼがイオン化された水を必要とする加水分解反応を行っているのかについて、その分子機構はまったく不明でした。今回システインに対して親水性環境下でのみ反応するMTS試薬を用い、活性中心となるアスパラギン酸を含む膜貫通領域内の各アミノ酸について、どのような環境にあるかを検討しました。その結果、γセクレターゼの活性中心は脂質二重膜内に存在する親水性の孔(ポア)に面していることが明らかになりました。また各種阻害剤を用い、切断反応に直接関与しているアミノ酸残基を複数同定しました。今後このような構造情報を元に、γセクレターゼの構造活性相関・化合物による阻害機構の解明が可能になると期待されます。本研究は、The Journal of NeuroscienceのThis Week in The Journal(TWIJ Article)に選ばれました。




新しい論文がBioorganic & Medicinal Chemistry Lettersに発表されました。

Novel γ-secretase inhibitors discovered by library screening of in-house synthetic natural product intermediates
(天然物合成中間体ライブラリーより、新規γセクレターゼ阻害剤を同定)

Yasuko Takahashi, Haruhiko Fuwa, Akane Kaneko, Makoto Sasaki, Satoshi Yokoshima, Hifumi Koizumi, Tohru Takebe, Toshiyuki Kan, Takeshi Iwatsubo, Taisuke Tomita, Hideaki Natsugari, and Tohru Fukuyama
Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 2006 Jul 15;16(14):3813-6. Epub 2006 May 8.

新規骨格を持つγセクレターゼ阻害剤の同定は、副作用の少ないアルツハイマー病治療薬開発の上で、必須であると考えられます。今回、本学天然物合成化学教室・創薬理論科学教室との共同研究により、天然物合成中間体を主とする新規in house化合物ライブラリーを作製し、本研究室にて開発されたin vitro γセクレターゼアッセイを用いてスクリーニングしたところ、二つの新規骨格を持つ化合物がγセクレターゼ活性を阻害することを見出し、その構造展開により構造活性相関を試みました。今後この化合物をシードとし、新たな阻害剤探索を試みると同時に、光親和性標識などの分子プローブ化技術を応用することにより、その阻害機構を分子レベルで明らかにすることが可能になると期待されます。本研究は、本学COE「戦略的基礎創薬科学」のプロジェクトとして行われた共同研究成果です。




新しい論文がBiochemical and Biophysical Research Communicationsに発表されました。

Three-dimensional structure of the γ-secretase complex.
(γ-secretase複合体の三次元構造を解明)

Toshihiko Ogura, Kazuhiro Mio, Ikuo Hayashi, Hiroyuki Miyashita, Rie Fukuda, Raphael Kopan, Tatsuhiko Kodama, Takao Hamakubo, Takeshi Iwatsubo, Taisuke Tomita, Chikara Sato.
Biochemical and Biophysical Research Communications 343:525-534 (2006)

γセクレターゼの三次元構造解析はその作動機序の解明・特異的阻害剤の開発の上で、必須であると考えられます。しかしγセクレターゼのような高分子量膜蛋白複合体の構造解析は、X線結晶解析等の通常の方法では困難です。今回、産業技術総合研究所・脳神経情報研究部門・佐藤主税先生のグループとの共同研究により、電子顕微鏡とイメージプロセッシングによる単粒子解析法により、バキュロウイルス・Sf9細胞発現系において再構成されたγセクレターゼの三次元構造を世界で初めて明らかにすることに成功しました。今後この技術を応用することにより、γセクレターゼの作動機序・化合物の阻害メカニズムを分子レベルで明らかにすることが可能になると期待されます。


Three dimensional reconstruction of the purified gamma-secretase complex


新しい論文がMolecular Neurodegenerationに発表されました。

Presenilin-dependent intramembrane cleavage of ephrin-B1.
(新規γ-secretase基質ephrin-B1の発見)

Taisuke Tomita, Sayaka Tanaka, Yuichi Morohashi and Takeshi Iwatsubo
Molecular Neurodegeneration 2006 Jun 12;1:2, doi:10.1186/1750-1326-1-1

どのような蛋白がγセクレターゼによる膜内配列切断の基質となっているかということは、γセクレターゼ阻害剤によるアルツハイマー病治療における副作用を考える上でも重要です。今回ephrin-B1がγセクレターゼの基質であること、その切断によってアクチン性突起の伸長に影響を及ぼすことを見出しました。ephrin-BはEphレセプターとの相互作用を介して異種細胞間情報伝達に寄与しており、神経細胞のシナプス可塑性への関与も報告されています。今後γセクレターゼ阻害剤によるephrin-Bの切断抑制が、脳内でどのような効果を引き起こすかを明らかにすることが重要であると考えられます。


presenilin-dependent intramembrane cleavage of ephrin-B1


新しい論文がJournal of Biological Chemistryに発表されました。

Carboxyl-terminal fragment of presenilin is the molecular target of a dipeptidic γ-secretase-specific inhibitor DAPT
(γ-secretase特異的阻害剤DAPTの標的分子がプレセニリンC末端断片であることを解明)

Yuichi Morohashi, Toshiyuki Kan, Yusuke Tominari, Haruhiko Fuwa, Yumiko Okamura, Naoto Watanabe, Chihiro Sato, Hideaki Natsugari, Tohru Fukuyama, Takeshi Iwatsubo, and Taisuke Tomita
J Biol Chem. 2006 May 26;281(21):14670-14676. Epub 2006 Mar 28

γセクレターゼ阻害剤がどのような分子メカニズムによって酵素活性を阻害するかということは、新規阻害剤の探索のみならず、その切断機構の理解の上で重要です。今回γ-secretase特異的阻害剤であるDAPT(A)に、光親和性標識基・ビオチン基を導入したDAP-BpB(B)の合成に成功しました。そしてこの化合物を分子プローブとして用い、DAPTの標的分子がプレセニリンC末端断片であり、基質が活性中心に移行する過程を阻害している可能性を見出しました。本研究はこれまで作用点が明らかでなかったDAPTの作用機序を世界で初めて明らかにしたと同時に、ケミカルバイオロジー的アプローチによってγ-secretaseの切断機構の一端を明らかにしたという意味で、有意義な研究成果です。今後同様の手法により、様々な化合物の作用機序を明らかにすることができるものと期待されます。本研究は、本学COEプロジェクトの一つとして行われた、天然物合成化学教室・創薬理論科学教室との共同研究成果です。


DAPTによるγ-セクレターゼ阻害メカニズム


新しい論文がBiochemical and Biophysical Research Communicationsに発表されました。

Roles of distinct cysteine residues in S-nitrosylation and dimerization of DJ-1
(DJ-1の異なるシステイン残基がS-ニトロシル化及び2量体化に果たす役割)

Genta Ito, Hiroyoshi Ariga, Yasuhito Nakagawa and Takeshi Iwatsubo
BBRC, 339: 667-672 (2006)

家族性パーキンソニズム(park7)の病因遺伝子産物DJ-1蛋白質は、3つのシステイン残基を持ち、そのうちCys106が酸化ストレス耐性に重要であることが示されていましたが、他のシステイン残基の役割は不明でした。今回DJ-1がCys46, Cys53でS-ニトロシル化を受けること、Cys46は二量体化にも重要な役割を果たすことを培養細胞を用いたラベリング実験から明らかにしました。パーキンソニズムと酸化ストレスの関係を追求する上で興味深い結果と考えられます。




新しい論文がJournal of Biological Chemistryに発表されました。

Familial Parkinson mutant α-synuclein causes dopamine neuron dysfunction in transgenic C. elegans
(家族性パーキンソン病変異型α-シヌクレインを発現するトランスジェニック線虫はドパミン神経の異常を生じる)

Tomoki Kuwahara, Akihiko Koyama, Keiko Gengyo-Ando, Mayumi Masuda, Hisatomo Kowa, Makoto Tsunoda, Shohei Mitani, and Takeshi Iwatsubo
J. Biol. Chem. 2006; 281: 334-340; doi:10.1074/jbc.M504860200

α-シヌクレインはパーキンソン病の変性ニューロンにレビー小体として蓄積し、家族性パーキンソン病の病因遺伝子でもあることから原因との関連が注目されています。今回東京女子医大・三谷昌平博士の協力により、ドパミン性神経細胞に家族性パーキンソン型変異α-シヌクレインを発現するトランスジェニック線虫(C. elegans)を作出し、ドパミン神経細胞の異常を再現することに成功しました。今後関連遺伝子の解析や創薬に有力なモデルとなることが期待されます。
(Aは線虫のモノアミン性神経細胞の蛍光像、Bはノマルスキ顕微鏡像、CはA53T変異α-シヌクレイン発現TG線虫ドパミン神経の免疫染色像)




新しい論文がJournal of Biological Chemistryに発表されました。

Pen-2 is incorporated into the γ-secretase complex through binding to transmembrane domain 4 of presenilin 1
(Pen-2はPresenilin 1の第4膜貫通領域と結合を介してγ-secretase複合体に組み込まれることを発見)

Naoto Watanabe, Taisuke Tomita, Chihiro Sato, Toshio Kitamura, Yuichi Morohashi, and Takeshi Iwatsubo
JBC, 2005; 280: 41967-41975; doi:10.1074/jbc.M509066200

PS、Nct、Aph-1、Pen-2の四つの膜蛋白からなる複合体γセクレターゼの構造学的解析は非常に困難です。しかしその構造活性相 関情報は、創薬の上でも重要です。今回渡邊らは、PSの各膜貫通領域を異なる蛋白にスワップした変異体を用いて検討しました。その結果、Pen-2が PS1のTMD4に直接結合することがあきらかとなりました。
Pen-2の結合はγセクレターゼ活性化の最終段階と考えられており、今後Pen-2の結合が分子レベルでどういった変化を起こしているかを明らかにすることにより、γセクレターゼの構造活性相関の理解に近づくものと期待されます。




新しい論文がJournal of Biological Chemistryに発表されました。

Aph-1 contributes to the stabilization and trafficking of the γ-secretase complex through mechanisms involving inter- and intramolecular interactions
(Aph-1は分子内、分子間相互作用によりγ-secretase複合体の安定化及び細胞内輸送に寄与することを発見)

Manabu Niimura, Noriko Isoo, Nobumasa Takasugi, Makiko Tsuruoka, Kumiko Ui-Tei, Kaoru Saigo, Yuichi Morohashi, Taisuke Tomita and Takeshi Iwatsubo
Journal of Biological Chemistry 2005 280:12967-12975
2005年4月1日号に掲載



新しい論文がJournal of Biological Chemistryに発表されました。

CLAC binds to amyloid beta peptides through the positively-charged amino acid cluster within the collagen domain 1 and inhibits formation of amyloid fibrils
(CLACが第1コラーゲン領域内の正電荷アミノ酸クラスターを介してAbと結合し、さらにAbの凝集を抑制することを発見)

Yoshihide Osada, Tadafumi Hashimoto, Akiko Nishimura, Yoko Matsuo, Tomoko Wakabayashi and Takeshi Iwatsubo
Journal of Biological Chemistry 2005 280:8596-8605
2005年3月4日号に掲載



新しい論文がJournal of Biological Chemistryに発表されました。

Selective reconstitution and recovery of functional γ-secretase complex on budded baculovirus particles
(バキュロウイルス粒子に活性型γ-secretase複合体が選択的に再構成されることを証明)

Hayashi I, Urano Y, Fukuda R, Isoo N, Kodama T, Hamakubo T, Tomita T, Iwatsubo T
JBC, 2004; 279:38040-38046
2004年9月3日号に掲載(doi:10.1074/jbc.M405597200)

アルツハイマー病の脳アミロイドの主成分であるAβペプチドを膜内で切り出すγセクレターゼは、プレセニリンをはじめとする4種類の膜蛋白の複合体から成ることから、in vitroで、高いプロテアーゼ活性を保った状態で再構成することは困難でした。今回林らは、東大先端研の浜窪・児玉教授のグループとの共同研究により、バキュロウィルスの発芽小胞上に、ヒト型γセクレターゼを高い効率で再構成することに成功しました。今回確立された方法を用いることにより、γセクレターゼの構造活性相関の解明や、効率的な阻害剤のスクリーニングが飛躍的に進むものと期待されます。

図はバキュロウイルスから発芽する発芽小胞上にγ-secretase複合体を発現させる模式図


林BV模式図


新しい論文がAmerican Journal of Pathologyに発表されました。

Mostly separate distributions of CLAC- versus Aβ40- or thioflavin S-reactivities in senile plaques reveal two distinct subpopulations of β-amyloid deposits
(CLAC陽性斑はAβ40あるいはthioflavin S陽性斑とは異なるβアミロイド斑を形成することを発見)

Kowa H, Sakakura T, Matsuura Y, Wakabayashi T, Mann DMA, Duff K, Tsuji S, Hashimoto T, Iwatsubo T
American Journal of Pathology 2004 165: 273-281
2004年7月号に掲載

アルツハイマー病の脳に蓄積する老人斑のアミロイドには、Aβペプチド以外にも様々な蛋白質性成分が含まれることが知られています。我々の研究室では、神経細胞特異的に発現する膜結合型コラーゲンCLAC-Pの細胞外部分がCLAC蛋白として老人斑に蓄積することを見出しました(HashimotoT. et al. EMBO J, 2002)。今回古和らは、アルツハイマー脳に多発するCLAC陽性老人斑は、thioflavinSやAβ40陽性を示す典型的なアミロイド斑とオーバーラップしない、特異なサブポピュレーションを形成することを病理学的に示しました。この結果は、CLACがアミロイド蓄積に果たす役割を考える上で、重要な手掛かりを与えるものです

図はアルツハイマー病患者脳老人斑においてCLACとAbの共焦点顕微鏡による観察像。CLACはAb42(左)と共存するが、Ab40(右)とは相反する染色像を示す。


古和CLAC陽性斑


新しい論文がNatureに発表されました。

The role of presenilin cofactors in the γ-secretase complex
(γ-secretase複合体に含まれるcofactorの役割を解析)

Nobumasa Takasugi, Taisuke Tomita, Ikuo Hayashi, Makiko Tsuruoka, Manabu Niimura, Yasuko Takahashi, Gopal Thinakaran and Takeshi Iwatsubo
Nature 2004 422:438-441
2003年3月27日号に掲載(doi:10.1038/nature01506)

γ-secretase複合体に含まれる構成因子として、活性中心を担っていると考えられているプレセニリン(PS)のほかに、ニカストリン(NCT)、APH-1、PEN-2が同定されています。これらの因子はいずれもγ-secretase活性に必須であることが知られていますが、それぞれの役割については不明でした。そこで私たちはショウジョウバエにおいてもγ-secretaseによる切断機構が保存されていることに着目し、RNAi(二本鎖RNAによるRNA干渉法、遺伝子発現を低下させることができる)及び過剰発現系を用いてこれらの因子がγ-secretase活性に及ぼす影響について検討し ました。その結果まずPSにNCT、APH-1が結合し安定化され、その後PEN-2によって活性型γ-secretaseになることがわかりました(図)。今後それぞれの因子の機能を更に詳細に検討することにより、γ-secretaseによる切断機構を明らかにすることが可能になるものと考えられます。またこれらの因子に対する低分子化合物が新しいγ-secretase阻害剤となることが期待され、これまでにない新しいタイプのアルツハイマー病治療薬に結びつく可能性があります。

以上の研究結果は日本経済新聞共同通信、朝日新聞で配信されました。






PS複合体の形成機構


新しい論文がJournal of Biological Chemistryに発表されました。

Sulindac sulfide is a non-competitive γ-secretase inhibitor that preferentially reduces Aβ42
(非ステロイド性抗炎症薬のひとつであるSulindac SulfideがAβ42産生を有意に阻害するγ-secretase阻害剤であることを証明)

Yasuko Takahashi, Ikuo Hayashi, Yusuke Tominari, Kentaro Rikimaru, Yuichi Morohashi, Toshiyuki Kan, Hideaki Natsugari, Tohru Fukuyama, Taisuke Tomita and Takeshi Iwatsubo
Journal of Biological Chemistry 2003 278:18664-18670
2003年5月16日号に掲載(doi:10.1074/jbc.M301619200)

γ-secretaseはAPPのみならず他の基質も切断することから、γ-secretase阻害によるアルツハイマー病治療・予防については、重篤な副作用が懸念されています。疫学的調査より、非ステロイド性抗炎症薬の服用がアルツハイマー病の発症リスクを低下させることが報告されています。そのメカニズムについては不明ですが、主に脳内での抗炎症作用によるものであると考えられてきました。しかし2001年、一部の非ステロイド性抗炎症薬がγ-secretase活性に影響を与え、Aβ42産生を特異的に阻害すること、また Notch切断は阻害しないことが報告されました。そこで私たちは非ステロイド性抗炎症役が直接γ-secretaseに対して阻害作用を持つかどうかを検討するため、in vitro γ-secretaseアッセイ系を構築し検討しました。その結果Sulindac sulfideはAβ42産生を有意に阻害すること、また高濃度ではAβ40産生、Notch切断も阻害するγ-secretase阻害剤であることを証明しました。今後Sulindac sulfideをリード化合物とした創薬を行うことで、Aβ42産生のみを抑制し、副作用の少ないアルツハイマー病予防・治療薬の開発につながるものと期待されます。



新しい論文がJournal of Biological Chemistryに発表されました。

The mechanism of γ-secretase activities through high molecular weight complex formation of presenilins is conserved in Drosophila melanogaster and mammals
(PS高分子量複合体によるγ切断機構がショウジョウバエにおいても保存されていることを証明)

Nobumasa Takasugi, Yasuko Takahashi, Yuichi Morohashi, Taisuke Tomita and Takeshi Iwatsubo
Journal of Biological Chemistry 2002 277:50198 - 50205
2002年12月20日号に掲載

プレセニリンを含んだ高分子量複合体は、γ-secretaseそのものである可能性が示唆されています。プレセニリンはさまざまな動物種のみならず、植物にまで広く存在することから、γ-secretaseによる切断機構がさまざまな生物において重要である可能性が高いと考えられています。実際に、マウスやショウジョウバエにおいては、γ-secretaseによるNotchレセプターの切断が、初期発生に重要であることが示されています。しかしショウジョウバエプレセニリン蛋白そのものについての解析は、ほとんど行われてきていませんでした。今回私たちはこのショウジョウバエプレセニリンについて生化学的検討を行い、ヒトプレセニリンと同様の分子機構を用いて高分子量複合体を形成し、γ-secretase活性を発揮することを示しました。また最近、二本鎖 RNA を用いて遺伝子発現を低下させる、RNAi(dsRNA mediated interference)という手法が、ショウジョウバエ個体や、培養細胞系で有効であることがわかってきました。私たちはショウジョウバエS2細胞にヒトと同様のγ-secretase活性が存在し、RNAiを用いてプレセニリンをノックダウンし、実際にγ-secretase 活性が低下することを確認しました。今後ショウジョウバエのゲノム情報を元に、S2細胞を用いて過剰発現系及びRNAiを活用していくことで、γ-secretaseに関わる分子機構を明らかにしていくことができるものと考えています。



新しい論文がJournal of Biological Chemistryに発表されました。

Phosphorylated α-Synuclein Is Ubiquitinated in α-Synucleinopathy Lesions

Masato Hasegawa, Hideo Fujiwara, Takashi Nonaka, Koichi Wakabayashi, Hitoshi Takahashi, Virginia M.-Y. Lee, John Q. Trojanowski, David Mann and Takeshi Iwatsubo
Journal of Biological Chemistry 2002 277:14965-14975
2002年12月13日号に掲載



新しい論文がJournal of Biological Chemistryに発表されました。

Molecular Cloning and Characterization of CALP/KChIP4, a Novel EF-hand Protein Interacting with Presenilin 2 and Voltage-gated Potassium Channel Subunit Kv4
(新規PS2及び電位依存性Kv4カリウムチャンネル結合蛋白としてCALP/KChIP4を同定)

Yuichi Morohashi, Noriyuki Hatano, Susumu Ohya, Rie Takikawa, Tomonari Watabiki, Nobumasa Takasugi, Yuji Imaizumi, Taisuke Tomita and Takeshi Iwatsubo
Journal of Biological Chemistry 2002 277:14965-14975
2002年4月26日号に掲載

家族性アルツハイマー病の原因遺伝子プレセニリンは、脳アミロイドの主要構成成分であるβアミロイドの産生にかかわる酵素である、γ-secretaseに必須な分子であることが知られてます。その役割は明確ではありませんが、プレセニリンやさまざまな蛋白を含んだ高分子量複合体がγ-secretaseそのものである可能性が示唆されています。今回我々はPS2のC末端部分を釣り針(bait)とした2-hybrid法によるスクリーニングによって新たな結合蛋白CALPを同定しました。培養細胞を用いた解析から、CALPは細胞内でPS2と相互作用している一方、γ-secretaseとしての機能には大きな影響を与えないことを見出しました。またCALPがすでに報告されていた電位依存性カリウムチャンネルの機能修飾因子であるKChIPファミリーと相同性が高かったことから、CALPがカリウム電流に対する影響を検討したところ、CALPはKv4.2チャンネルに結合してA型カリウム電流を調節し、KChIPとしての機能を持っていることを見出しました。



新しい論文がEMBO Journalに発表されました。

CLAC: a novel Alzheimer amyloid plaque component derived from a transmembrane precursor, CLAC-P/collagen type XXV
(新しいアルツハイマー病アミロイド成分としてCLAC前駆体・25型コラーゲンに由来するCLAC蛋白を同定)

Hashimoto T, Wakabayashi T, Watanabe A, Kowa H, Hosoda R, Nakamura A, Kanazawa I, Arai T, Takio K, Mann DMA, Iwatsubo T
EMBO Journal 21:1524-1534
2002年4月2日号に掲載

アルツハイマー病の脳にはアミロイド物質が蓄積し、発症の原因となると考えられています。脳アミロイドの主成分はβタンパクですが、これ以外にもアミロイドに固くくっつき、βタンパクの蓄積やアルツハイマー病の発症に影響を与えるタンパク質の存在が想定されてきました。今回我々は、アルツハイマー病の脳にたまったアミロイドから新規の成CLACを同定しました。CLACはコラーゲン状の構造をもち、膜を貫通する形のCLAC前駆体タンパク(25型コラーゲンとも命名されました)から、furinという切断酵素で切り出され、分泌されることも突き止めました。コラーゲンは通常皮膚や血管などの結合組織に大量に存在する線維性のタンパクですが、神経細胞がコラーゲンを作っているということもはじめて分かった事実です。CLACタンパクはβアミロイドに付着することにより、βアミロイドの凝集に影響を与えたり、周囲からの分解に対し抵抗性を与え、アルツハイマー病の発症に影響 を与える可能性が考えられます。このタンパクの存在は1997年にペンシルベニア大のトロジャノフスキー、リー教授らにより予想されていました (Science 277: 31-32, 1997)が、数年にわたる研究の結果、今回我々の研究チームがその同定に成功しました。アミロイド蓄積阻害治療、発症前診断への応用も期待されます。

図は抗CLAC抗体9D2と抗βアミロイド抗体で二重染色したアルツハイマー病の脳組織。CLACとβアミロイドが共存する老人斑は黄色に染色されています。


抗CLAC抗体による免疫染色


新しい論文がNature Cell Biologyに発表されました。

α-Synuclein is Phosphorylated in Synucleinopathy Lesions
(シヌクレイノパチー病変に蓄積したα-シヌクレイン蛋白がリン酸化を受けていることを証明)

Hideo Fujiwara, Masato Hasegawa, Naoshi Dohmae, Akiko Kawashima, Eliezer Masliah, Matthew S. Goldberg, Jie Shen, Koji Takio and Takeshi Iwatsubo
Nature Cel l Biology 2002 4:160-164
2002年2月号に掲載

高齢者に生じる神経変性疾患の中で、運動機能の冒されるパーキンソン病、アルツハイマー病に似た痴呆症状を示す「Lewy(レビー)小体型痴呆症」の頻度が増加しています。これらの疾患には有効な根本的治療法がなく、その発症機序も不明です。これらの疾患ではα-シヌクレインというたんぱく質が、神経細胞の中で異常を起こし、たとえば” Lewy小体”と呼ばれる線維状の固まり(封入体)をつくって蓄積することが、神経細胞の死滅や症状発現の原因の一つとみられており、まとめて「シヌクレイノパチー」と呼ばれています。しかし正常なα-シヌクレインがどのような原因で線維を形成するのか、線維をつくったα-シヌクレインにはどのような特徴が生じているかには不明の点が多く残されていました。今回我々は、Lewy小体型痴呆症やパーキンソン病の脳にたまったα-シヌクレイン蛋白を分析し、140個ならんだアミノ酸のうちの1個、129番目のセリンが特異的に「リン酸化」を受けていることを証明しました。リン酸化は、たんぱく質の機能を変える生体内の重要な反応ですが、神経細胞に蓄積したたんぱく質のリン酸化は、アルツハイマー病でもタウ蛋白にみられており、パーキンソン病でもα-シヌクレインのリン酸化がその蓄積・細胞障害に重要な役割を果たしている可能性があることがわかりました。またこの発見がシヌクレイノパチーの診断や治療に結びつく可能性も期待されます。

パーキンソン病の有病率は人口10万当たり100人に近づきつつあり、特に高齢者ではその数倍に達しようとしています。Lewy小体型痴呆症は、かつてアルツハイマー病と混同される場合もありましたが、老化による痴呆症の原因としてはアルツハイマー病に次いで頻度がたかく、アルツハイマー病の20%前後にのぼることがわかってきました。

以上の研究結果は 朝日新聞で紹介 されました。

写真はリン酸化α-シヌクレイン特異抗体で染色したDLB脳皮質(緑に染まった球体がLewy小体、突起状に染色されるのがLewy neurite)


抗リン酸化synuclein抗体による免疫染色